かぜ症状の鼻水に対するペリアクチンについて

当院では開業以来、小児領域の「鼻水」症状に対してペリアクチンという薬を使用してまいりましたが、今後はかぜ症状に対する処方を控える方針とします。現在でもペリアクチンは多くの小児科や病院でも処方されている薬ではありますが、小児科の専門医の先生の間では処方が減ってきているそうです。

その理由を以下に記載します。

ペリアクチンは抗ヒスタミン薬という種類のメカニズムで、アレロック・アレグラ・アレジオンなどと同じようなメカニズムで効果を発揮する薬であり、本来的には抗アレルギー薬です。ただし、かぜ症状の鼻水に対する根本的な治療薬は小児にも成人にも存在しないため「鼻水止め」として抗アレルギー薬が広く使われています。

ペリアクチンは鼻水の量を減らす一方で、鼻水の粘稠性を高めてしまう(鼻水がかたくなる)、結果として鼻水や痰が出しにくくなるという問題があります。

かぜ症状の際の鼻水は一般的に最初は「サラサラ・透明で量が多い状態」から、時間と共に「量は減り、かたく・粘稠性が高い状態」となります。

当院としてはこれまで「鼻水の量が多く、サラサラの間は使用して、かたくなってきたら使用は中止」というような説明を行っておりました。これは鼻水がかたくなった状況で「鼻水止め」を継続使用することによって粘稠性が高まり鼻詰まりが悪化する可能性があること、結果として咳嗽が悪化する可能性が懸念されるからです。

かぜ症状の鼻水は生理的な防御機構であり、そもそもアレルギーで鼻水が出ているわけではないこと、小児では大人よりも痰の排出が難しく咳が長引いてしまう可能性があることから、今後はかぜ症状の鼻水に対してはペリアクチンを含めた抗ヒスタミン薬の処方を中止したいと思います。花粉症などアレルギー性疾患に対してはメリット・デメリットを勘案して今後も処方を検討致します。

鼻水に対しては「止めたい」という要望をよく頂くのですが、むしろ「出しやすくする」よう考えて、ムコダイン(カルボシステイン)という粘液調整薬を積極的に処方していきたいという考えです。

ペリアクチンは50年以上使われ続けている薬で、現在でも多くの医療機関でペリアクチンが処方されている薬です。それで、多くのお子様が治癒してきたことを考えると大きな問題ではないのかもしれません。しかしながら、もともと体内に備わっている生理的な力を利用する方が体に優しいと考えられますし、何よりも医学的・学術的により正しいと考えられるような治療を提供したいという思いから、今後の治療方針を変更させて頂くこととしました。

今後も学術的な知見に変化があれば柔軟に対応して参りたいと思います。ご理解のほど、お願い致します。

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