高齢者の肺炎球菌ワクチン接種について

この記事は、これまでのエビデンスと2024年4月に行われた呼吸器学会の知見を参考に作成しています。

話をわかりやすくするために、年齢でのみ議論をしていますが、60歳以上65歳未満で、心臓、腎臓若しくは呼吸器の機能、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能のいずれかに身体障害者1級相当の障害があるか方も定期接種の対象となります。詳しくは、熊谷市のページをご覧ください。

https://www.city.kumagaya.lg.jp/kenkouhukushi/kenkohoken/jogyoannai/yobou/kourei_haien.html

肺炎球菌は、その名の通り「肺炎」を起こす代表的な細菌です。肺炎における頻度が多いのと同時に、敗血症や髄膜炎といった重篤な感染症(侵襲性肺炎球菌感染症といいます)。を起こすことがあることも特徴です。なお、侵襲性肺炎球菌感染症のリスクとしては糖尿病、COPD、心疾患、がん治療中が知られています。

肺炎球菌ワクチンは、肺炎の予防だけでなく、肺炎球菌による重篤な感染症を防ぐ目的で行う予防注射です。

実は日本ではコロナワクチンの接種率は高いのですが、欧米諸外国と比較して肺炎球菌ワクチンの接種率が低いことが問題になっています。当院でもお声かけをしており通院中の方は接種されている方が多いのですが、一般の方への周知の問題もあり、どこにも通院していない方の接種が少ない状況です。

肺炎球菌に対しては、小児と高齢者(65歳の方)を対象として定期接種としての予防接種を行っております。実は小児と高齢者で使用するワクチンが違います。便宜的に「小児用」「高齢者用」と呼ぶこともありますが、本質的な違いはメカニズムとカバーする肺炎球菌の種類です。

なお、定期接種とは法律に基づいて市区町村が主体となって実施する予防接種です。実は同じ定期接種でも、小児では集団予防を目的としており、高齢者では個人予防を目的としているとされています。ちなみに、熊谷市では高齢者の肺炎球菌ワクチンの定期接種の自己負担金は2000円です。

2024年4月現在、小児にはPCV15、高齢者にはPPSV 23というワクチンを定期接種として接種していますが、実は高齢者にもPCV 15を任意接種として接種することが可能です(そもそも先に高齢者に承認されました)。

これまで当院では高齢者の方に初回は定期接種、2回目は以降は任意接種の形で5年ごとにPPSV23の接種を勧めておりました。

最近、2つのワクチンを絡めると、より強い効果が期待できるエビデンスが集積してきましたので、当院としてもエビデンスに沿う形で接種を進めて参りたと思います。

順番としてはPCV→PPSVの方がPPSV→PCVよりも高い免疫が得られると考えられています。いずれも間隔は1年空けることが推奨されています。

ただし、PCV→PPSVだと任意接種→定期接種になってしまうため、通院中の方につきましては64歳時点でご希望を伺おうと思います。

65歳でPPSV23の定期接種をした後の追加接種を希望される方に関しては、1年後にPCV15(任意接種)→最初のPPSV23から5年毎にPPSV23(任意接種)という流れを採用したいと思います。

すでに定期接種や追加接種でPPSV23を受けた方に関しては、接種から1年間隔が空いていれば、PCVの接種が可能です。

複雑であるため、スケジュールは当院からご案内しますのでご安心ください。

今後も新しい知見が得られましたら、診療に反映して参りたいと思います。

以下、補足です。

・2024年4月から、小児肺炎球菌ワクチンがPCV13からPCV15に変更となりました。カバーできる肺炎球菌の種類が広がりました。副反応については大きな変わりないと考えられているため、今後未知の問題が出てこなければ「改良」と考えられる変更です。

・もともと、高齢者の肺炎球菌ワクチンは2014年から開始され、国からの「特例措置」として「65歳以降の5の倍数の年齢になる方かつ初回の接種」が定期接種の対象となっていました。2024年4月から定期接種の対象となる年齢が「65歳のみ」になりました。定期接種の対象となる範囲が縮小された形になり残念ですが、国の財源の問題が大きいのと特例措置として十分期間設けたからであると聞いております。

ただし、今後65歳になられる方につきましては65歳で接種をすることさえできれば大きな問題はないとも考えられます。これまで行えていた70歳、75歳では定期接種として行えなくなりましたので、ご注意下さい。

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